距離空間とHausdorff空間のあいだのコンパクト部分集合を保つ単射の連続性について
1. 距離空間からHausdorff空間に向けての単射の場合 (連続になる)
【命題】
距離空間$X$、Hausdorff空間$Y$、およびコンパクト部分集合をコンパクト部分集合にうつす単射$f: X \to Y$が与えられたとき、$f$は連続である。
距離空間$X$において、写像が連続であることは「点列連続性」と同値です。したがって、$X$内の任意の収束する点列$x_n \to x$に対して、$Y$において$f(x_n) \to f(x)$となることを示せば十分です。
【証明】
- $X$において$x_n \to x$となる点列をとります。このとき、点列とその極限からなる集合$K = \{x_n \mid n \in \mathbb{N}\} \cup \{x\}$は$X$のコンパクト部分集合です。
- 仮定より、$f$はコンパクト集合をコンパクト集合に写すため、像$f(K)$は$Y$のコンパクト部分集合となります。
- ここで、結論である$f(x_n) \to f(x)$を背理法で示します。
もし収束しないと仮定すると、$f(x)$のある開近傍$V$と、$(x_n)$の部分列が存在して、その部分列のすべての項が$V$の外に存在することになります。(表記を簡略化するため、この部分列を改めて$(x_n)$と置きます。つまり、すべての$n$で$f(x_n) \notin V$と仮定して話を進めます。)
- 集合$C = f(K) \setminus V$を考えます。$Y$はHausdorff空間なので、コンパクト集合$f(K)$は閉集合です。$V$は開集合なので、$C$は$f(K)$の閉部分集合となり、$C$自身もコンパクトになります。
- 前述の仮定により、点列$\{f(x_n)\}$はすべてコンパクト空間$C$に含まれます。コンパクト空間内の無限点列は少なくとも1つの集積点(極限点)を持つため、$\{f(x_n)\}$の集積点の1つを$y \in C$とします。
- $y \in C$であり、$f(x) \notin C$なので$y \neq f(x)$です。$f$は単射であるため、ある自然数$m$が存在して$y = f(x_m)$となります。
- ここで、元の集合から1点を除いた集合$K_m = K \setminus \{x_m\}$を考えます。$x_n \to x$である事実に変わりはないため、$K_m$は依然として$X$のコンパクト集合です。
- 仮定より$f(K_m)$は$Y$のコンパクト集合であり、$Y$がHausdorff空間であることから$f(K_m)$は$Y$における閉集合となります。
- $y$は点列$\{f(x_n)\}$の集積点であり、除外した$f(x_m)$以外のすべての項は$f(K_m)$に含まれています。したがって、$y$は閉集合$f(K_m)$の閉包に含まれるため、$y \in f(K_m)$となります。
- しかし、$y = f(x_m)$であり、$f$は単射であるため、$f(x_m) \notin f(K_m)$とならなければなりません。これは矛盾です。
- したがって、背理法の仮定は誤りであり、$f(x_n) \to f(x)$が成り立つことが示されました。よって$f$は連続です。$\blacksquare$
2. Hausdorff空間から距離空間に向けての単射の場合 (反例あり)
【構成する反例の概要】
Hausdorff空間$X$から距離空間$Y$への単射で、コンパクト集合をコンパクト集合にうつすが、連続ではない写像$f$の例を構成します。
具体的には、「コンパクト集合が有限集合のみとなるような、通常の位相より細かい位相を入れた実数空間」を$X$とし、通常の距離位相を入れた実数空間を$Y$として、特定の点($x=0, 1$)でのみ値が入れ替わって不連続となる関数$f$を考えます。
逆方向の$f: X \to Y$($X$がHausdorff、$Y$が距離空間)では連続になりません。詳細な構成は以下の通りです。
【空間と写像の構成】
- 定義域$X$: 実数全体$\mathbb{R}$に対して、通常の位相より細かい以下の位相を与えた空間とします。
ある部分集合$U$が$X$の開集合であるとは、通常の$\mathbb{R}$における開集合$O$と、ある可算集合$C$を用いて$U = O \setminus C$と表せることと定義します。
- 終域$Y$: 通常の距離位相を入れた実数空間$\mathbb{R}$(距離空間)とします。
- 写像$f: X \to Y$: $f(0) = 1$、$f(1) = 0$とし、それ以外の$x$については$f(x) = x$とする単射関数とします。
条件を満たすことの確認
- $X$はHausdorff空間である
$X$の位相は通常の$\mathbb{R}$の位相よりも細かい(開集合が多い)ため、通常の$\mathbb{R}$が持つHausdorff性をそのまま受け継ぎます。
- コンパクト部分集合をコンパクト部分集合にうつす
まず、$X$におけるコンパクト集合は有限集合のみであることを示します。
もし$X$に無限個の点を持つコンパクト集合$K$が存在したとすると、その中に可算無限部分集合$A = \{a_1, a_2, \ldots\}$がとれます。ここで、$X$の開被覆として$O_0 = X \setminus A$と$O_n = X \setminus (A \setminus \{a_n\})$を考えます(補集合が可算なので、これらは$X$においてすべて開集合です)。これらは$K$を完全に被覆しますが、どの有限部分被覆をとっても$A$の要素を有限個しか覆うことができず、$K$全体を覆うことができないため、コンパクト性に矛盾します。
したがって、$X$のコンパクト集合は有限集合に限られます。$f$がどのような写像であれ、有限集合は有限集合に写されます。そして$Y$(通常の$\mathbb{R}$)において有限集合は常にコンパクトです。よってこの条件は満たされます。
- $f$は連続ではない
$x = 0$における連続性を確認します。$f(0) = 1$です。
$Y$における$1$の開近傍として$V = (1/2, 3/2)$をとります。この$V$の$f$による逆像は$f^{-1}(V) = \{0\} \cup ((1/2, 3/2) \setminus \{1\})$となります。
もし$f$が連続であれば、これは$X$の開集合になるはずです。開集合であると仮定すると、定義から通常の開集合$O$と可算集合$C$が存在して、$0 \in O \setminus C \subseteq f^{-1}(V)$となります。
$0 \in O$なので、$O$は微小な区間$(-\epsilon, \epsilon)$を含みます。しかし、$\epsilon$を十分に小さく取ると$(-\epsilon, \epsilon)$は$(1/2, 3/2)$と一切交わりません。
したがって、$(-\epsilon, \epsilon) \setminus C \subseteq \{0\}$とならざるを得ません。これは、非可算な要素を持つ区間$(-\epsilon, \epsilon)$が、高々可算な集合$C \cup \{0\}$に完全に含まれることを意味し、明確な矛盾です。
よって逆像は$X$で開集合ではなく、$f$は連続ではありません。
3. 定義した位相が実際に位相の公理を満たすことの証明
反例で定義した「通常の開集合から可算集合を除いたもの」の全体が、実際に位相の公理を満たすことを確認します。新たに定義する部分集合の族を$\mathcal{O}$とおきます。
定義:
$\mathcal{O} = \{ O \setminus C \mid O \text{ は } \mathbb{R} \text{ の通常の位相での開集合}, C \text{ は可算集合} \}$
公理1:全体集合と空集合が含まれること
$\mathbb{R} \in \mathcal{O}$および$\emptyset \in \mathcal{O}$を示します。
- $\mathbb{R} = \mathbb{R} \setminus \emptyset$と表せます。$\mathbb{R}$は通常の開集合であり、空集合$\emptyset$は有限集合(可算集合の一種)なので、$\mathbb{R} \in \mathcal{O}$です。
- $\emptyset = \emptyset \setminus \emptyset$と表せます。$\emptyset$は通常の開集合であり、空集合は可算なので、$\emptyset \in \mathcal{O}$です。
公理2:有限個の共通部分が含まれること
$U_1, U_2 \in \mathcal{O}$ならば$U_1 \cap U_2 \in \mathcal{O}$を示します。
定義より、$U_1 = O_1 \setminus C_1$、$U_2 = O_2 \setminus C_2$と書けます($O_1, O_2$は通常の開集合、$C_1, C_2$は可算集合)。このとき、共通部分は集合の演算により以下のように変形できます。
$$U_1 \cap U_2 = (O_1 \setminus C_1) \cap (O_2 \setminus C_2) = (O_1 \cap O_2) \setminus (C_1 \cup C_2)$$
- $O_1 \cap O_2$は通常の開集合の有限交叉なので、通常の開集合です。
- $C_1 \cup C_2$は可算集合同士の有限和なので、可算集合です。
したがって、$U_1 \cap U_2$も「通常の開集合$\setminus$可算集合」の形をしているため、$U_1 \cap U_2 \in \mathcal{O}$となります。数学的帰納法により、任意の有限個の共通部分についても成り立ちます。
公理3:任意個の和集合が含まれること(最重要ポイント)
$\mathcal{O}$の任意の元からなる族$\{U_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$について、その和集合$U = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} U_\lambda$が$\mathcal{O}$に含まれることを示します。
各$U_\lambda$は$U_\lambda = O_\lambda \setminus C_\lambda$と表せます。ここで、通常の開集合の和集合$O = \bigcup_{\lambda \in \Lambda} O_\lambda$を考えます。通常の位相の公理から、$O$は通常の開集合です。
$U \subseteq O$であるため、$C = O \setminus U$とおいたとき、$C$が可算集合になることを示せば、$U = O \setminus C$となり証明が完了します。
- リンデレーフ性の適用
$\mathbb{R}$の通常の位相は第二可算公理を満たすため、リンデレーフ空間です。したがって、任意の開被覆から可算部分被覆を取り出すことができます。
開集合$O$は$\{O_\lambda\}_{\lambda \in \Lambda}$の和集合ですが、リンデレーフ性により、その中から可算個の$\{O_{\lambda_n}\}_{n=1}^\infty$を選んで、$O = \bigcup_{n=1}^\infty O_{\lambda_n}$とすることができます。
- $C$が可算であることの証明
任意の要素$x \in C$をとります。$C = O \setminus U$なので、「$x \in O$」かつ「$x \notin U$」です。
- $x \in O$なので、先ほどの可算部分被覆のどれか、ある$k$について$x \in O_{\lambda_k}$となります。
- 一方で$x \notin U$なので、すべての$\lambda$について$x \notin U_\lambda$です。当然$x \notin U_{\lambda_k}$です。
- $U_{\lambda_k} = O_{\lambda_k} \setminus C_{\lambda_k}$であり、$x \in O_{\lambda_k}$なのに$x \notin U_{\lambda_k}$であるということは、除外された集合の中に$x$があること、すなわち$x \in C_{\lambda_k}$を意味します。
以上より、$C$の任意の要素$x$は、可算個の$C_{\lambda_n}$のどれかに必ず含まれることになります。つまり、
$$C \subseteq \bigcup_{n=1}^\infty C_{\lambda_n}$$
となります。可算集合の可算和はまた可算集合であるため、右辺は可算集合です。その部分集合である$C$も可算集合となります。
よって、$U = O \setminus C$($O$は通常の開集合、$C$は可算集合)と表せるため、$U \in \mathcal{O}$が示されました。
以上の3つの公理を満たすため、$\mathcal{O}$は確かに$\mathbb{R}$上の位相を定めていることが証明されました。